うなぎパイ「夜のお菓子」はアノ意味じゃなかった
【カレー沢薫の「ひきこもりグルメ紀行」】

【カレー沢薫の「ひきこもりグルメ紀行」Vol.6 浜松「うなぎパイ」】
 
 メジャーどころが続いて恐縮だが今回のテーマは「うなぎパイ」だ。
 
 メジャーすぎて類似品がクソほど出てしまっているのだが、今回は本家「夜のお菓子」こと春華堂のうなぎパイである。

◆「家族団らんのためのお菓子」という意味だった!

 しかし、夜のお菓子ときた。

「夜の」と「俺の」をつければ何でも下ネタになることはあまりにも有名である。
「夜の寛永御前試合」なんてもう、将軍様の前で何してけつかるねんという話だ。

 しかし、春華堂の主張する「夜のお菓子」は「家族団らんのためのお菓子」という全く健全すぎる意味だ。

 思えば昨今、女の子の萌えキャラを登用すれば「卑猥・女性蔑視」、女子高生をポスターモデルにすれば「わいせつ物陳列罪」と、確かにそう見えるものもあるが、あきらかに過剰反応と言えるものも多い。そしてそういうことを言い出す奴に限って頭の中がエロでパンパンだったりするのだ。

 そんな奴に「夜のお菓子」というのはどうだろうか、などと言ったら泡を吹いて倒れる。

 つまり誰も「夜のお菓子」を止めなかった、ということは製作に関わった人間は全員死ぬほど健全ということである。パステル調の部屋でホットミルクを飲みながら「家族団らんなら、夜のお菓子とかいいんじゃないかしら」「すごーい」「たのしーい」で決まったのだと思う。

 この菓子は育ちがいい。信用できる。

 私みたいなのが一人でも混ざっていたら「なるほど、両親が団らんして、家族が増えるよやったねたえちゃん! ということですね」などと言い出して、このキャッチフレーズは闇に葬られたに違いない。

◆「原材料:うなぎ粉」の味がしなくてよかった

 それより、うなぎパイだ。

 うなぎパイとは平べったく長い棒状のパイだ。形をうなぎに見立てているだけかと思ったら原材料にちゃんと「うなぎ粉」が入っている。しかし、うなぎの味はしない。だがおそらくしない方が美味い。

 そう、うなぎパイは美味い。シンプルな材料に素朴な甘み、決して派手ではないが、あのサクサク感がたまらない。

 あのサクサクのためにかなりバターを使っていると思うので、デブ製造機であることには間違いなさそうだが、もしうなぎパイを開封して、リアルうなぎで言うところの肛門あたりで止めて、また明日食べようとなる奴がいたら正気を疑う。

 何が言いたいかというと、食べだしたら止まらないということだ。

◆朝のお菓子は、なぜか「すっぽんの卿」

 銘菓の老舗には赤福パイセンのようにほぼ一点張りのところもあるが、春華堂は、ほかにも多数の商品を出している。

 その中に「お菓子のフルタイム」と呼ばれる、知る人ぞ知る、知らない人は浜松市民でも知らない謎の詰め合わせがあるという。

「お菓子のフルタイム」は「夜のお菓子はあるのに、朝と昼はないのか」という、ツイッターだったら「クソリプ」と言われる、お客様の声から生まれたセットだそうだ。

 まず朝のお菓子は「すっぽんの卿」だ。

 春華堂は健全会社と言ったが、さすがにコレはわざとじゃないだろうか。しかし、春華堂はすっぽんの菓子を出しただけでそれ以上何も言っていない。すぐソッチを連想するこちらが悪いのだ。つまり「試されている」のである。

 なぜ朝のお菓子かと言うと「食欲のない朝でもサクッと食べられる」という意味らしい。

「食欲ないから、軽くすっぽんでいいよ」となる奴はそうそういない気がする。おそらく調子が良い時は朝から牛一頭ぐらい食ってる奴向けなのだろう。

 ちなみに形だけでなくちゃんとすっぽんスープも配合されているようだ。

 ここで「朝からそんなに元気になってどうするの」などと言った奴は負けである。

 昼のお菓子は「しらすパイ」だ。

 ここで「さては朝とか昼とか関係ねえな」と気づいたわけだが、このしらすパイは砂糖をかけた甘口と、わさびをきかせた辛口がある。つまり、甘口と辛口を交互に食べれば永遠に食えるということである。恐ろしいことだ。

◆真夜中のお菓子「うなぎパイV.S.O.P」の真夜中っぷり

 そして夜のお菓子は我らがうなぎパイなわけだが、お菓子のフルタイムはここで終わらない。延長戦、むしろここからが本番だ。

 一時、うなぎパイ界隈を騒然とさせた「真夜中のお菓子」こと「うなぎパイV.S.O.P」満を持して登場である。

「うなぎパイV.S.O.P」とは。

 芳醇な香りとマカダミアナッツとゴマの香ばしさ、水の変わりに生クリームと牛乳を使用、さらにはブランデーまで入っているという贅沢品。まさにうなぎパイを超えた最高級うなぎパイなのである。

 と、担当が添付してきた資料に書かれていた。そしてその後に「お送りしてない菓子について長々と説明してすみません」と添えられていた。

 そう、担当から贈られてきたうなぎパイはスタンダードなもので、「うなぎパイV.S.O.P」は入っていなかった。つまり、ただ猛烈に食べたくなっただけである。

 その代わりなのか、うなぎパイの他に「うなぎボーン」という商品が入っていた。うなぎの骨を揚げて味付けした、カルシウム満点のおつまみである。

 そして担当の手紙には「見た目が抜殻っぽくてカレー沢さんが食べれるか心配なのですが」と書かれていた。

 多分そう言われなかったら「抜殻っぽい」などと思わずおいしく食べることができた。

「夜のお菓子」や「すっぽん」が狙ってやってるかはわからないが、担当は間違いなく狙っているので、こちらも負けずに奴の心臓や眉間を狙おうと思う。

<文・イラスト/カレー沢薫>
【カレー沢薫(かれーざわ・かおる)】

1982年生まれ。OL兼漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』で漫画家デビュー。自身2作目となる『アンモラル・カスタマイズZ』は、第17回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選出。主な漫画作品に、『ヤリへん』『やわらかい。課長 起田総司』『ねこもくわない』『ナゾ野菜』、コラム集に『負ける技術』『もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃』『ブスの本懐』などがある

最終更新:3/17(金) 16:20

女子SPA!

 
 

コメント(Yahooニュース)
頑張れニッポン☆ | 2017/03/18 10:03 
うなぎもスッポンもシラスも浜松 浜名湖の名物だから、
お菓子として商品化したんですよね〜♪

ポンスキー3号 | 2017/03/17 20:06 
そんなのかなり前から常識やん…
 
今更。

nek***** | 2017/03/17 19:57
うなぎボーンはあっさりカリカリしてて美味かった。
でもよく噛まないと刺さる。

riy***** | 2017/03/18 07:57
筆者の表現がツボった。
朝から笑わせてもらいました。
多謝。

・・・・などなど
 
○●○●○●○●○○●○●○●○●○
管理人:
どう考えても、誤解されること狙ったネーミングだろw
みんな、精力剤的なイメージ持ってたと思う。
 
まあ、「夜」の概念が昔と変わってきたってのもあるかも。
昔は、日が落ちれば夜だったけど、
今は家族団らん後のプライベートタイムってイメージだからねぇ。
「夜=深夜」って感じかな。
 
でもまあ、誤解されたままでも良いような気がするww



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