今クールのアニメは手書き、セルルックCGともに意欲作が目白押し!今から追いつく作品レビュー

otoCoto 5/6(土) 16:55配信


 2017年4月期のアニメも放送が5話ほどまで進んだ。
 
 安定の面白さを見せている『進撃の巨人』『弱虫ペダル』『夏目友人帳』といった人気作品の続編はもちろんなのだが、今期のアニメを見ていて「おや?」と思わされたのが3DCGの使い方の安定化だ。
 
 アメリカをはじめとした海外のアニメーションがCG全盛になってからかなりが経つ。むしろ、僕らが多く目に出来る海外の劇場アニメーションではいまや手描きの作品が珍しくなってしまった。
 一方、日本のアニメの主流は今でもやはり手描きであり、アニメーターが生み出す“動き”の面白さこそが日本アニメの魅力そのものであるとも言える。
 海外の日本アニメファンが日本のアニメに感じる魅力もそこだろう。

 
 だが、デジタル化の波がアニメ表現の世界にも大きなうねりとなって訪れるようになってから10数年が経つ。
 その10数年で、日本は独自の面白い表現を生み出した。「3DCGで手描き(2D)アニメ風の映像を再現する」という表現手法であり技術だ。従来のセルアニメ風であることから「セルルックCG」「セルルックアニメ」とも呼ばれる。この手描き風のCGというのは見渡した限り日本独特のもので、まさに手描きアニメにこだわり続け、その魅力がわかっている国だからこそ生まれた独自の手段だ。
 
 ものすごく簡単に説明すると、従来の手描き(2D)は紙に描かれた画を、何枚も連続させることで動きを生み出す。
 対してセルルックは、見た目こそ2Dの画に見えるが、その実態はコンピュータ上で作られた3DCGの“人形”のようなもので、この人形を操って“2Dの画のような動き”を表現した物になる。

 
 セルルックCGによる作品は劇場作品・TVシリーズともに増加しており、深夜のTVシリーズでも最近は毎シーズン1作ほどはこのスタイルで制作した30分作品がある。5分などのショート作品を含めればもっと多い。昨年に話題となった作品でも『ブブキ・ブランキ』『亜人』などがあり、前シーズンに話題となった『けものフレンズ』もそうだ。
 すでに何年も前から使われ始めている技術だが、本格的に注目されるようになったのはおそらく13年に放送されたTVアニメシリーズ『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』あたりからではないかと思われる。全編がCGでありながら、手描きアニメのような美少女キャラが動く映像はちょっとした衝撃であった。
 というのも、日本のアニメを象徴する記号の1つに「アニメ画の美少女」があるが、かつてはこのアニメ美少女をCGで表現することは難しいと思われていた。CGではどうしても“アニメ美少女”という記号を表現している2Dのウソを再現することが難しかったからだ。
だが、その困難に挑んだクリエイターは多く、ゲーム分野では早くからこの課題に取り組まれていた。それが、アニメにおいては『蒼き鋼のアルペジオ』の登場あたりで2Dと比べても遜色のない美少女の表現が可能となったことが証明されたのだ。
 
 これは「CGでアニメ画のカワイイ女の子が描けるようになった」ということだけではなく、「CGで手描き風アニメを再現することに近づけた」という技術の進歩をあらわしたことそのものでもある。
 
 しかしそれはゴールではなく始まりだった。デジタル技術のほとんどがそうであるように、このセルルックCGも日進月歩で、絶えず進化し続けている。
 これまで30分作品は毎シーズンに1作ほどの作品数であったが、話題作の中にこのセルルックCG作品が数作ひしめいている今期は、模索の時期が終わったのではないかと感じられる。
 
今期のいくつかの作品を紹介したい。
 
『正解するカド』
 
 突如、羽田に現れた謎の巨大物体。そこから現れた謎の知性体と人間とのコンタクトから始まるSF作品だが、毎回なにかしら驚かされる展開があり目が離せない。毎週のシリーズ物を見る面白さに満ちている。人類以外とのコンタクト、政府や世界の反応。知性体はある提案を人類に出してきたが、今の現実世界の問題を上手く反映させたものとなっており、大人向けの作品だ。
 
 制作している東映アニメーションは日本の手描きアニメを牽引してきた老舗スタジオでもある。だが決して守りに入ること無く、09年の劇場作品『きかんしゃやえもん』以降、フルCGの作品にも精力的に取り組んできた。2012年に公開された劇場作品『アシュラ』では、鉛筆で描いたような画を全編CGで表現した。14年の劇場アニメ『楽園追放 -Expelled from Paradise-』(アニメーション制作:グラフィニカ)ではセルルックCGで製作。これは「普段アニメを見ない人は手描きだと思うのでは?」とすら思わされる映像になっており驚かされた。上映後に僕の後ろにいた若い子はヒロインの可愛さの話ばかりしていたが、この反応は同作が3DCGによるアニメ画美少女の表現に成功した証だったといえる。
 その東映アニメーションが挑んだのがこの『正解するカド』だ。同社にとって、セルルックCGを主としてTVシリーズに挑むのは初の試みとなる。
 とはいっても『正解するカド』は、作品のキャラクター全てに3DCGを使っているわけでは無い。部分的には手描きによるキャラクターやカットも使っている。CGはまだコストがかかることもあり、3割ほどは手描き作画によるものだそうだが、作り手の使い分け・使い方が上手いこともありアニメファンでも気づきにくい。
 見た感じでは2D調キャラクターの自然さに驚かされつつ、異物体「カド」のCGならではの不思議な表現などがマッチしており、ストーリーのみならず映像からも目が離せない作品となっている。
 
 前述したような「手描きとセルルックの違い」を比べて見てみたい人にわかりやすく、最適な作品もある。

『フレームアームズ・ガール』がそうだ。
 
 壽屋が発売しているオリジナルの美少女型プラモデルを原作としたアニメだが、この作品では人間キャラクターは手描き。15cmほどの人型模型であるフレームアームズ・ガールはセルルックCGで表現されている。異なる表現手法のキャラクターが同時に存在しているため、手描きとセルルックというものの違いがわかりやすい。
 この作品では大きさの違いや、そもそもの人間と模型の質感・動きの違いなどをこれによって効果的に描き分けている。
 
 冒頭に書いたように、セルルックCGは日本ならではのアニメ技術であり、人によっては「日本のアニメの未来を担う技術」だとする人もいる。たぶんそれは間違っておらず、今後も進化し、日本のアニメの一端を担っていくだろう。
 だが、これも冒頭に記したようにアニメーターが生み出す“動き”の面白さこそが日本アニメの魅力そのものでもあることは不変の物だ。今期のTVシリーズにはその魅力が存分に楽しめる作品もある。

 例えば『神撃のバハムート VIRGIN SOUL』だ。
 
 ソーシャルゲームを原作とするファンタジー作品で、14年に放送された『神撃のバハムート GENESIS』の第2シリーズとなる。前シリーズはアニメファンならクレジットを見るだけで驚くようなアニメーターの名が並んでいた作品で、そのクオリティの高さが話題を呼んだ。当時ネットで、アニメ業界の人が「腕の良いアニメーターが全員『バハムート』にもっていかれた」という発言をしているのを見かけたが、冗談にしても納得がいくほどだった。
 
 その第2シリーズの今作も総作画監督の恩田尚之をはじめそうそうたる名前が並び、アニメファンはキャラクターの動きを見ているだけでも満足してしまいそうになる。
 加えて書くと、この作品では大河ドラマ『功名が辻』をはじめ、幾多の人気ドラマを手がけてきたベテラン大石静が初のアニメ脚本を手がけていることも見逃せない。ゲーム原作と言っても、アニメのストーリーはオリジナルだ。ドラマ界のベテランが、それまでのドラマ作品とは全く異なるファンタジーをどう描くのか。すでに序盤だけでも一筋縄ではいきそうにない雰囲気が物語に漂っている。こういう部分もドラマファンであれば注目してみるのもいいだろう。
 
 手描きの良さと言えば、『月がきれい』も今期のアニメの中で僕が好きな作品だ。原作なし、オリジナルの作品で、思春期まっただ中の中学生たちを主人公とした、すごくゆっくりと距離が縮まっていく恋の話だ。
 彼らのちょっとしたことが起こる日常の空気感や、世界観そのものが持つ柔らかさを、手描きで描かれたイラスト調のアニメーションが大きく引き立てている。
 毎回、心にじわっと心地よいものが伝わってくる作品だが、その心地よさにこの手描きが生み出す温度があることは間違いない。埼玉県川越市の実際に存在している風景もあり、一見すれば「実写でできるのでは?」と思う人もいそうだが、このじわっと染みてくる感覚はアニメ、それも手描きの映像だからこそ描けているものだ。
 
 フルCGやセルルックCGはもはや目新しい技術でも、表現手段として模索のものでもなくなってきた。しかしそれは、決してデジタルが占めてきてきたというわけでも、デジタルに取って代わられる時代が始まったわけでも無い。
 ストレートなCG作品の面白さが楽しめる作品、人が生み出す手描きの気持ちよさが楽しめる作品、部分的に3Dを使う・手描きを使うといったハイブリッドな表現が生む可能性。これら全てが並んでいるのが今のTVアニメであり、日本のアニメが誇れる部分でもある。
 
 世界アニメ界の巨人であるディズニーは、CG作品を主力とするべく、数年前に手描きのアニメーターを大量に解雇した。極端な方針に危機感を持ったジョン・ラセターがかつての2Dアニメ時代のスタッフを呼び戻し制作した劇場長編が『プリンセスと魔法のキス』(09)だが、2D長編は『くまのプーさん』(11)以後の新作がなかなか作られず、ほぼ毎年のように新作が製作される3DCG作品と比べると縮小傾向は否めない。一度失われてしまった技術を取り戻すことはとてつもなく難しい。
 
 デジタルとアナログというのはとかく対立構造で語られることも多く、「デジタル技術に駆逐されるアナログ」という論調はあらゆる分野で見かける物だ。だが対立しているのでも、どちらが優れているのでも無く、あくまでもそれぞれの技術であり技法であり手段だ。課題はそれぞれの利点を上手く活かせるのかどうかになる。これは社会全体のあらゆる分野におけることだろう。
 今、アニメを見ていて面白いのは、その模索や回答の導き方が、映像で見えることだ。日々変化し進歩していくこれらの技術が、これからどのようになっていくのか。注目し続けていきたい。もしかしたら、数年後にはいま世を席巻している3DCGですら古いものになっているのかもしれないのだ。
 
 もちろん今回挙げた以外にも、話題作注目作は多い。「でも、もうシーズン中盤あたりまで来ちゃってるんでしょう?!」といっても、今では配信によって追いかけて見られるようになってきた。多くの作品は公式サイトで配信についてもアナウンスをしているので、評判をたよりにそれらに目を通してみるのも良いだろう。
岡野勇(オタク放送作家)

最終更新:5/6(土) 16:55

otoCoto

 
 
 
コメント(Yahooニュース)

Qohen | 2017/05/07 01:07
けもフレはセルルックCGには見えないが。

uno***** | 2017/05/06 19:01
今期のプリキュアをちらっと見たときに、今までよりセルっぽい動きだなと感じたんだが気のせいじゃなかったようだ。
 
反面「モアナ」では骨格や動きがより人間らしく表現されてて、それぞれ目指すところの違いが感じられて面白い。

sa9***** | 2017/05/06 19:27
アルペジオの3話ぐらいまでは違和感半端ない感じだったけど、(慣れもあるんだろうが)最終話では、かなり自然な感じに熟成されたのを覚えている。正直、ここまで来たかとも思った。
 
記事にもあるように手書きと3Dの融合は日本独特かもしれないけれど、3Dの強みは「(背景とかの)素材」や人の動かし方のノウハウが蓄積されていくことだと思う。
理屈では、動く骨格ができれば、あとは貼り付けるだけだから、他の部分に予算が回せる…ハズ。…当然、そんなに簡単なことじゃないだろうが。
 
どんどん面白い方向に成長していって欲しいもんだ、とファミコンを懐かしむオッサンは考えました。

・・・・などなど
 
○●○●○●○●○○●○●○●○●○
管理人:
もう、手書きの戦闘シーンを見ることは無くなってきましたね。
綺麗で迫力もあってCGでも悪くはないんですが、
独特の誇張やキャラのデフォルメなんかは、
まだ手描きの方が印象の良いとも思います。
 
特に、騒動に巻き込まれて吹っ飛ばされるモブキャラに
アニメーターの悪ふざけが反映していたりするようなお遊びが
見られなくなったのは寂しい限りです。
 
戦闘シーンを手描きするという面倒な作業だからこそ、
おふざけの一つも入れないとやっていられなかったのかもしれませんねw