世の中には「おっぱいの揺れ」を研究している人がいた… おもしろすぎる「ヘンな論文」たち

現代ビジネス 6/28(水) 21:01配信
 

  論文というと硬い読み物だというイメージのある人が多いのではないでしょうか。
 
 たしかに一見、タイトルも回りくどいし、文章もなかなか、なにがわかったか断言してくれなくて、わかりにくそうに見えます。
 
 しかし、長年おもしろ論文ハンターとして活動している私からすると、それらすべてが「わかりやすい」。
 
 タイトルが長いのは、「どういう状況・条件下で」「なにを」「どうしたのか」が全部書かれているので、タイトルを読めばなにをやったか一発でわかる。「かもしれない」とか「だと思われる」を「だ」「だと思う」と言わないのは、100%ではない以上断言しないという「真実」へのリスペクト。
 
 世の中の「まだわからないこと」をなんとかして「わかるところまで調べよう」としている人たちがいます。「ここまでわかった」あるいは「これではないことがわかった」ことも論文になるんです。
 
 もっとも知られていないことは、どんな身近なことでも研究になる、そして論文にまとめられるということ。今回はそんな「ヘンな論文」をご紹介します。

おっぱいの揺れを記録しています
 
 たとえば、下着のことって普段だれかと話したりしますでしょうか? 
 これだけ毎日身に着けていながら、会社や家族ともなかなかしゃべらない。少しだけタブーになっているようなことも、研究の世界ではなんの先入観も偏見もなく行われています。
 
 大村知子さん、山内幸恵さん、平林優子さんが2008年に『日本家政学会誌』に投稿した論文です。
 
 「本研究では、姿勢変化の過程における人体とパンツの軌跡を三次元動作解析システムにより捉えた。」
 
 いきなり本気の「三次元動作解析システム」って言う言葉が出てきちゃうあたり、ちょっと笑っちゃいませんか? いや、人体とパンツの軌跡ってなんだよ、とか。キラーフレーズ連発じゃないですか。この人たちは三人で真面目にこれ研究しているんですよね。
 
 でも、こういう研究がないと、実際に着る下着の着用感って向上しないんですよ。
 
 実は企業がお金を払ってこういう研究をお願いしている場合もあるし、大学ではなくて企業が研究チームを組織して常日ごろからこういうデータをとったりアンケート調査をして、よりよい着用感を目指しているんですよね。
 
 
 おなじ『日本家政学会誌』には「走行中のブラジャー着用時の乳房振動とずれの特性」という論文(岡部和代、黒川隆夫、2005年)という論文も載っていました。
 
 これは走っているときにブラジャーがどれだけずれるのか、おっぱいの揺れとの関連性を0.01秒ごとに撮影して検証した論文です。うらやましいと思いますか? 
 「走行中の」という条件を絞っているということは、おなじ実験を「歩行中」でもやるし、あるいは「立っているときと座っているとき」とかでもやるということです。地道ですよねえ。ほとんどが計測したデータと向き合う日々。しかしこうした研究の先に、着心地のいいブラジャーがあるのです。
 
 そのうち、男性でも付け心地のよいブラジャーが出るかもしれません。
 
 下着は色の意識調査や、付き合っている相手にどういう色の下着を着ていてほしいかとか、どこからどこまでを勝負下着と思うかなど、それはそれはたくさん研究されています。これは研究者がエロいからではなく、それだけ身近なものだからです。
 
 こんなことが研究になるの!? と思う人もいるかもしれませんが、身近なものだからこそ研究対象になるんです。
 
データからキスのタイミングを導き出す
 
 下着だけではありません。人間として生きてきて永遠の課題だと思われているものだって研究されています。
 
 たとえば恋愛。好きな人を振り向かせるとか、どうやったら運命の人に会えるかとか、そういうことにいきなり向かうのではなく、まず「恋愛」しているときに人はどうなるのか、とか、どういうときに人は恋に落ちるのか、とか、そういう「条件」を研究するところからはじまります。
 
 それは、心理学の研究だったり、建築学の研究だったりします。それは「どういう精神状態のとき」に、「どういうところで」恋愛をするのか、ということなら、実証可能だからですね。
 
 牧野幸志さんが2008年に発表した論文「青年期における恋愛と性行動に関する研究(1)-デート状況と性行動の正当性認知との関係-」は、男からしたら「あるある」な行動、しかし女性からしてみたら「わかんない」ことを、ちゃんとデータを取って調べた論文です。
 


 論文は、最初に「要旨」とか「要約」が載っているので、わりとそこで大まかな「なにをやったのか」はわかります。一例としてこの論文の「要約」の冒頭を紹介しましょう。
 
 「本研究は、親しい関係にある男女が、どのような状況において、どの程度の性行動を正当と考えるかを検討した。
 
 実験計画は、被験者の性別(男性、女性)×デートに誘う側(男性、女性からそれとなく、女性)×デート内容(映画、飲み会、相手のアパートへ、自分のアパートへ)の3要因被験者計画であった。
 
 被験者は短大生・大学生240名(男性120名、女性120名、平均年齢18.42歳)であった。従属変数は、性行動レベル別に、キス、ペッティング、性交の3測度であった。」

 
 やべえ、結果超知りたい!  どっちが誘ったデートで、どこに行ったかで、その日「してもいい」レベルがなんとなくわかるという論文なのだ。
 
 恋愛をしているときはテンパっているものですが、「ここまでなら普通かな」とか「いつ手を繋げばいいのだろう」「キスしてもよいのだろうか」とか悩むくらいだったら、データ取るのが学者です。
 
 このあと牧野先生は、どこからが「浮気」なのかという「浮気の基準」の調査や、「浮気に対する態度」の研究なども(2)で展開なさっています。(3)ではついに「浮気」の実態調査にまで踏み込むという追求ぶり。
 
 「浮気」は悪い。それはだれもが知っているけれど、なくならない。じゃあどういう人がどういうときに、なにを求めて浮気をしているのか。そんなことを印象ではなく、しっかりデータをとって明らかにする。それが研究なんですよね。
 
 結局、「印象論」て、いつまで経っても知として蓄積しないんです。しかし数字を取ってみたら、思っていたより多いとか、少ないとかがわかります。この繰り返しが人類の「知」です。
 
 恋愛に関しては、「する前」「しているとき」「終わるとき」のそれぞれの段階で研究が進んでいます。もちろん「しているとき」に「別の人とも付き合う」という行動は「浮気」として世間では嫌われていますが、なぜそういう行動をするのかをしっかり腰を据えて考えれば、防げるものは防げるかもしれません。
 
なんでコンドーム買わないの?

 研究は「人間とはなにか」と「この世界とはなにか(人間のまわりはどうなっているのか)」という研究、究極的にはこの二種類しかないと思っています。
 
 歴史や言葉の研究だったら前者、宇宙や植物の研究だったら後者です。
 
 「人間とはなにか」にもタブーはありません。
 
 樋口匡貴さん、中村菜々子さんの2009年の論文「コンドーム購入および使用におかえる公式的規範意識と非公式的規範意識」では、大学生を中心に、コンドームを買うとき、使うときは、どういう気持ちで買ったり使ったりしているか、と使用率を調べた論文です。
 
 
 だれもが避妊すべきと考えている期間に、コンドームを使うことを正義としながらも、使わない人が大勢います。それはなぜか。
 
 買う環境が整っていないのか、そもそも規範意識が低いのか。教育上の建前でしょと思っているから使わないのか、使いたいけど買うのが恥ずかしいと思われているなら環境を整えるべきなのか。HIV感染という危機を前に、建前論ではなく本音で問題に挑むのも研究の役目です。
 
 で、やってる作業は「コンドーム買うのは恥ずかしい? というセクハラ一歩手前のアンケートだったりするのだけれど、そういう意図でやっているとわかれば見方も変わりますよね。
 
 たぶん、「この人なにやってるんだ」と思われる論文も多いのですが、それは「点」にしかすぎません。ですが、その方の研究を「線」で追ったとき、見えてくるものがあります。
 
 「そういうことがしたかったのか!」
 
 それを知るのがうれしくて、こうして論文を探しています。
 

ネタバレだけは許せない!

 もちろん、ヘンな論文は理系の研究にもたくさん存在します。
 いま話題の人工知能の棋士だって、10年前は「一風変わった研究」だと思われていましたからね。
 「情報処理学会」という最先端の工学の学会にも、過去の論文にはこういうものがありました。
 
 これはTwitterとかで、その日あったスポーツの結果を知りたくなかったという人たちがいっぱいいて、それをどうやって防止するかということを必死こいて考えた論文です。
 
 『はじめに』で「ネタバレは由々しき問題」だと述べていて超面白い。意外に個人的な想いがキッカケなんだなと思うと、親近感もわきますよね。
 
 『ネタバレ』という言葉をちゃんと論文のタイトルに入れるというところもすごいです。これだって、もうちょっと堅苦しい人だったら『ネタバレ』という言葉を変換してしまう。“結果事前告知におけるなんとか~”のように。
 
 ですが、これを読んでもらいたい人に届けるために『ネタバレ』という言葉をあえてそのまま使っているところが「だれのために書いているか」も意識されていて、理系の論文はターゲットが明確で興味深いです。
 
 湯たんぽを追いかけ続けてキャリアの最後の10年を「湯たんぽの形態成立とその変化に関する考察」に費やした先生や、旧近鉄ファンがどこの球団を応援するようになったかスタジアムに行って調査するという、近鉄ファンがやったとしか思えない論文。
 
 また、針灸の先生が、「針灸を広めるために、世間の針灸の認知度を計りたい!」ということで、ひたすらマンガを読み漁って針灸が出てくるシーンだけを収集するとか、常軌を逸しているとか思えない「情熱」がほとばしっているのもヘンな論文。
 
 「プロ野球選手と結婚するためにはどうしたらいいのか」ということを真剣に考えて論文にまで仕上げた女子大生もいれば、「走れメロスはホントはどれくらいのスピードで走っていたのか」を算出した中学生、「鰻屋の秘伝のタレは継ぎ足してるけど、創業時のタレっていつまでもつものなのか」を計算した中学生など市井の研究者たちの論文だっておもしろい。
 
 だから論文ハンターはやめられないのです。「知りたい」という欲求は、だれにも止められないです。情熱を知るだけで興奮できるじゃないですか。
 
 「大変すぎて憧れないけど、すごい!」と思える人たちの生き方に触れてたいから、僕は論文を読んでいます。
サンキュータツオ

最終更新:6/28(水) 21:31

現代ビジネス

 
 
コメント(Yahooニュース
mor***** | 3日前
おっぱいはたくさん観察したけど得られたものはないな…
経産婦の赤ちゃんに授乳した長い乳首が最近気になる!こんなに伸びるの︎みたいな 

pyt***** | 3日前
何かの役にはたつのかも知れないなぁ……たぶん? 
mi***** | 3日前
胸が大きいと肩こるし、ブラジャーちゃんとつけてても歩いただけで微妙に揺れるからだらしなく見えるし、服買おうと思っても胸がきつくてサイズ合わないし、ワンピースやチュニック着ると、胸でどーんと前に出て布がその位置でストンと下に落ちるからドラム缶デブに見えるし、本当に良いことなんてない。
 
絶対にズレない・揺れないブラジャー開発してください・・・
Aカップくらいになりたいよ(T-T) 

shu***** | 3日前
イグノーベル賞にノミネートされるべきだな。
 
実際、研究者ってのは『何かの役に立つから』研究をしてるわけではなく『自分が興味があるから』研究している人達。
 
だから、再生細胞も、小惑星サンプルリターンも、おっぱいの揺れ方も、
一般の人達からどのように受け取られるかの違いだけであって、研究の本質は変わらない。 

fuy***** | 3日前
「おっぱいの揺れ」のデータを生かして
エロCGアニメを作るのだ! 

chibanchu | 3日前
 科学(学問、研究)は価値を扱わないから、そりゃ端から見たら理解不能なこともあるでしょ。
 
 二進法だって、大昔の人はアホかと思ってただろうけど、これだけコンピューターが普及するためには必要不可欠だったんだし。
 肛門から性器までの距離と生殖能力に相関があるなんて事例だって、生殖医療には重要な知見なんだから、何が役に立つのかなんて短絡的には判るわけがない。 

pdca***** | 3日前
ある人が「おっぱいと風圧の関係」を研究。
高速道路で時速110キロで窓から右手を
上に広げ、風圧を利用しモミモミすると、
Cカップを触っている感じを味わえるとか… 

牛乳大好き! | 3日前
何の得があるのか分からない。ただの脂肪みたいなもん。
大体、女性は揺れとかより、めちゃくちゃ重いのを何とかして欲しい。 

・・・・などなど
 
○●○●○●○●○○●○●○●○●○
管理人:
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「くだらない」と思って分かったつもりでいることが
実はわかっていなかった、注目してこなかった・・・
ってことは多いのだろう。
 
万有引力のニュートンの逸話、林檎の落ちることを考察したのも
考えれば、おかしな研究だしね。
 
真剣にやってるか、ネタでやっているか、
重要なのはこの一点なのかもw
 
乳揺れ3DCGが、物理挙動のCG技術を加速させた事実ってあるのかな(笑



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