なぜ、母親は勝手に部屋に入ってくるのか?!――
「ノックレスコミュニケーション」の被害に遭った人々の声
『ババァ、ノックしろよ!』

 中高生の頃に、ベッドの下に隠しておいたエロ本が学校から帰ると本棚に整頓されていたことがある。部屋の掃除をした母の手によって、片付けられていたのだ。読者の中にも、同じ経験をした人はいるのではなかろうか。それだけでなく、一人で「しているところ」に踏み込まれたという人もいるかもしれない。私はある。

 そんな母親からのゼロ距離攻撃、「ノックレスコミュニケーション」の被害に遭った人々の声を集めたのが本書『ババァ、ノックしろよ!』(TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル/リトル・モア)である。

 ラジオ番組のDJを務めるライムスター宇多丸によると、企画当初は自室での行為を母親に見つかってしまった的なネタばかりになってしまうことを懸念していたそうだ。しかし記念すべき一回目で番組ディレクターの逸話を取り上げたさいに、「勉強の合間に『AKIRA』を読む」といったような「それ自体は後ろめたくもなんともないはずの行為」ですら、母親からの突然の襲撃を受けると「心臓が止まるぐらいびっくり」してしまう様が面白く、「こういう感じもアリなら意外とイケるかも!」と思ったという。

 もちろん、冒頭の私のような一人行為の体験談もあり、「受験の重圧から来る心的外傷を紛らわせる」ためという投稿者の「色欲の一人遊び」なんて表現には脱帽した。宇多丸も「行為の表現の仕方が、ひとつの勝負どころでもあります」と述べており、同じようなシチュエーションの投稿での差異がまた面白い。

 そして被害に遭うのは男子ばかりではなく、ある女性投稿者は二十歳頃に自室で彼氏と「行為に及び」そのまま朝を迎えたら、母親によってふすまを開き放たれてしまったそうだ。上半身裸のまま「お、お母さん、ふすま閉めて!」と言う投稿者に対して、「閉めないわよ!」と返す母親。そのまましばらく、「閉めて」「閉めない」の攻防の末、ようやく閉めてもらい後で説教をくらったそうである。

 一方、反対の事例では、喘息で呼吸ができなくなり救急車で運ばれることもあった母親のことを日頃から気にかけていた女性投稿者は、高校三年生の頃に隣の部屋から母親の苦しそうな息遣いがして「お母さん! 大丈夫!?」と勢いよく障子を開けると、仰向けの母親と覆い被さる裸の父親のセックスを目撃してしまい、障子をそっと閉めたとか。


 これら親子の攻防における悲喜劇に気恥ずかしさを感じつつも、一気に読み上げてしまった。この気恥ずかしさの正体は、やはり母親の不動の愛情だろう。本書の表紙カバーのすみには「……でもね、お母さん、産んでくれて、ありがとう。」の言葉が添えられていて、そのままでは人前で読むには恥ずかしいと感じる読者のために表紙カバーはリバーシブルになっており、ひっくり返すと日本語以外の世界各国の言語で母親への感謝の言葉がちりばめられていた。

 読み終えて自分のことを振り返ってみると、中高生の頃に母は私が好きな漫画やアニメに関する新聞記事を見つけては、切り抜いて机に置いてくれたりした。それは、思春期で対話の少なくなった私との距離を縮めようとする母なりの心遣いだったのだろう。大人になって実家を出た今も変わらず、旅行のお土産などと一緒に新聞の切り抜きを持って家を訪ねてきたりする。今やネットで同じ記事は見られるのだけれど、その想いはやはり嬉しいものだ。だが、一つ問題なのは母親が合鍵を持っており、私が風呂に入ろうと部屋で服を脱ぎ廊下に出ると、裸で母親にバッタリ遭遇してしまうことだ。ババァ、呼び鈴鳴らせよ!

文=清水銀嶺

最終更新:12/9(金) 6:30

ダ・ヴィンチニュース

 


コメント(Yahooニュース)

mil***** | 2016/12/09 11:19
最近の記事では中々見られない良い記事じゃな

  ius***** | 2016/12/10 05:56
  (ほぼ)万人が共感する記事だろうね

  ius***** | 2016/12/10 05:58
  「ババア、ノックしろよ!」って、時代を越えて繰り返され、かつ、
  進化し続ける秀逸なコントのひとつだと思う。

har***** | 2016/12/09 07:14
最後に産んでくれてありがとうというのが、書いてあるのイイ

ryo***** | 2016/12/09 08:42
たしか、エヴァで日本の部屋に鍵がないのは、思いやりと察しと言ってた気がする。
そういう意味で、ノックすらしないのは、
思いやりと察しが足りないとも言える。

  ius***** | 2016/12/10 05:48
  エヴァって誰?
  ドイツ人の日本文学者か社会学者か何かですか?

天災ババァ | 2016/12/09 17:15
なかなか良い記事でした

kit***** | 2016/12/09 12:16
おもしろい。
アジアの文化は父系主義だが母性社会だ。欧米のような父性社会ではない。個人主義社会に変わっていく過程にあるので、こうしたことが頻発する。自分は個人的には個人主義は嫌いだ。個人の領域に入り込んで行く社会は面倒だが、幸せだ。

lun***** | 2016/12/09 08:46
新聞の切り抜きをそっと机の上に置かれていたエピソードにジワッときてしまう。愛が詰まった記事じゃねーか

  ius***** | 2016/12/10 05:55
  何だかんだと言ってもさ、結局、心の底から愛情を注いでくれるのは、
  この世の中でただひとり、母親だけなんだよ

mk_***** | 2016/12/09 13:01
行為のくだりは結局お互い様なんだなぁと思った。

ten***** | 2016/12/09 16:42
家族でもプライバシーは慎重しよう。

とても大事なことだと思う。

ちなみに私は親にそれを言ったら「プライバシーを尊重されたければ出て行け」と言われました。中3の夏かな。

ぽけ | 2016/12/09 07:07
うちのオカンは一度キツく怒ったら、二度と勝手に入って来なくなったなぁ…。
それはそれでちょっと淋しいものである。

  pek***** | 2016/12/09 09:17
  勝手だなあ。

  min***** | 2016/12/09 23:58
  素直な子供心だと思う。笑

  ius***** | 2016/12/10 05:50
  今、そう思えるあなたは、素敵だと思うよ( ´∀` )

***** | 2016/12/09 13:01
大人になったら笑い話になるよ。

  ius***** | 2016/12/10 05:53
  左腕をゴムでしばって、二本指で血管をペンペン叩いてるオヤジは、笑い話に出来そうにありません…

eir***** | 2016/12/09 09:27
うちの母親もノックせずに突然入ってくる人だったから何度か「部屋に入る時はノックして!」と言ったら、
ノックしながら部屋に入ってくるようになった。

いやいや、ノックしても返事聞かずに入ってきたら同じことですから〜(−_−;)
しかもノックしてほしいと言った時は、最初は「生意気な」と言われた。
子どもがノックしてほしいのは生意気なの?
今年私も母親になったけど、将来そんな親にはなりたくないと思いました。

kat***** | 2016/12/09 23:44
ノックしても即入ってくるんだけどな……(笑)

・・・・などなど(一部抜粋)
 
○●○●○●○●○○●○●○●○●○
管理人:
これは、誰にでも一つや二つは経験あることだよなw
もっとありがちなのが、兄弟姉妹の乱入かも。
 
こういう話をネットで見ていると・・・・
当時、ベストな隠し場所だと思った場所は
完全にバレてたんだぁというのが分かるw